夕陽が沈み、闇の帳が徐々に降りてくるとき、まわりにはオイラとガイド2人しかいなかった。適当な場所にお気に入りのLEITZの雲台をつけたGITZOの三脚を開き、球面ズミルックス35mmを装着したライカM4のシャッター速度をバルブ(B)に固定して、ガイドとともに砂浜に寝ころがる。もはやまわりは真暗になっていて、見上げる空には満天の星。
ガイドがオイラに言う「この時間帯が僕はいちばん好きなんです」シャッターをバルブにセットして30分の間、ガイドといろいろな話をした。バリ島には国の借金がないので将来に対する不安感はまったく持っていない。お金持ち日本人をたくさん見ているので、日本に一度行ってみたいが、自分の身分(バリ島では、カースト制とまではいかなくとも身分差は歴然とある)では、まず旅行など行けないということ。案内する島内の観光地と自分が生まれ育った村しか知らないという。月にもらう報酬(一応ガイド会社の社員だと言っていた)は¥15000ほど。日本人観光客だと1日いや1食で使っちまう金額だ。他に誰もいない砂浜で横たわりながら続けて聞いていると「それでも村ではいちばんの稼ぎ頭。農業に従事しているひとの年収は¥30000くらいです。」ガイドになることができて、自分も家族もとても幸せだと言っていた。その屈託のない笑顔を見ながら、彼の話が嘘ではないのがよくわかった。夜景を撮るのに随分長く砂浜に引き止めたけど、逆に「砂浜で星を見ながら、オイラと話がゆっくりできて楽しかった。」と喜ばせるコトを言う。ライカ1式と三脚(これはガイドが持ってくれる)を片付け、駐車場に戻り、ウブドまでの長い帰り道の途中、ワルン(屋台)で焼き鳥のようなサテーをツマミながら2人でビンタン・ビールを飲んだ。
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